◆ ◇ こわれていく ◇ ◆



すでに、何度目の夜となったかなど解かりもしない。
ただ解かるのは、人工的な灯りと、羽交い絞めにされたように、肌の上から直接紐でしばられているのみ。
何故このような事になったのかも、理由は曖昧のまま・・・目の前の佐伯克哉に・・・甚振られている自分の姿が、恥ずかしげもなく鏡に映し出されていた。

微かに見える、体あちこちにある擦れたような傷は、彼によって鞭で叩かれたものだった。
しかし私はもう、叩かれる事は快感でしかなく・・・叩かれては、射精をしてしまうので 彼はもう、鞭は辞めてしまった。
新たなる痛みが・・・快感が欲しくて、強請ってみるが 佐伯君は、うっすらと渇いた笑みのまま
「簡単には、あげませんよ」
そう言って、今度は私の髪を引っ張って体を離していく。

何もされないのが、一番苦痛だった。
痛みでも、なんでもいい。彼から与えられるものならば何でも・・・快感に繋がっていくのに。

今は、縛られた状態のまま、ペニスを触れるか触れないかの位置に彼の足がある。
踏まれてもいいのにと、本気で思えるから不思議だ。
彼のプレイは最高に気持ちよく、これまで行っていたクラブでの行為よりも・・・何よりも嵌っていった。
ああ・・・早く、君のその足で、私のペニスを踏んでくれ。

気づかないうちに、その気持ちを言葉にしていたのだろうか。
彼はまた、おもしろそうな顔をしていた。
「大隈専務も、物好きですね・・・」

物好きでも何でもかまわない。君がそうやって、私に囁いてくれるだけでも、ゾクリと快感が粟立つのだから。

ぼんやりとしていると、今度はアヌスからあらぬ感触を覚えていった。

いつもの・・・バイブではないのだろうか。
熱を帯びているわけでない、人工物ではあるが・・・彼自身に穿たれなくてもいいから・・・欲しくて欲しくてたまらなかったのに、今日のものはまた、違う感触がしてくる。
凹凸ある先が、私のアヌスの壁をこじ開けてきた。
何かの棒のようにも感じるそれは、ピリリと痛みも教えてくる。ああ・・・なんて気持ちがいいのだろう。
快感を口にしていくと、彼はまた楽しそうに笑っていった。

「今日は・・・鞭は使わなかったからな。変わりにあんたのソコに入れてやったんだ。・・・ククッなあ・・・そんなに気持ちいいのか?すごいな・・・あんたのココ、とても熱い。」
ぐりぐりと鞭の持ち手を押し込んでいくと、また快感が零れてくる。だが・・・やはり、佐伯君のものには敵わない。
「ああ・・・っ!・・・ああっ・・・!・・・いひぃ・・・!!・・・ダメだ・・・やはり・・・君のモノでないと・・・」

すでに血と、己のペニスから出てくる厭らしい液体が入り混じったものが、アヌスを濡らしてさらにひくつかせていく。
零れ出る快感を、さらに味わいたくて・・・呼吸困難に陥りそうになりながら、彼のペニスを強請ってみた。
「いや・・・まだだ・・・あんたは、俺のモノがなくてもイケるんだろう・・・?」
酷いと思う言葉なのに、その台詞にすら グラリと快感が誘われる。


ああ・・・私は壊れているのかもしれない。
だけど止まらない。
最後の最後まで、彼自身によって私を貫いてくれなくとも・・・
行為そのものこそが、彼の愛情なのだと思えれば なんてことない。

また、鞭の持ち手はぐぐぐと押し入れられていった。快感のポイントに当たってしまい、私はまた射精をしていく。
・・・我慢がきかなかった。

もっと、もっとだ。
もっと・・・壊れていくから、 私を見ていてくれ。